第52章

相澤裕樹は全身を強張らせ、両手を強く握りしめ、額には青筋が浮き上がり、危険で抑圧的なオーラを纏っていた。

思いもしなかった。藤原美佳が録音していたなんて。

しかも、その録音を樋口浅子に送っていたとは。

樋口浅子は再び再生ボタンを押し、その会話を繰り返し聞いた。

録音を聞きながら、彼女は笑いつつ涙を流していた。

今の姿は、まるで触れれば壊れてしまいそうな陶器の人形のようだった。

その脆い表情は、見ていて胸が痛んだ。

相澤裕樹の心は激しく揺さぶられた。

彼は手を伸ばして彼女のスマホを奪い取り、録音を止めた。

「もう聞くな!」

樋口浅子は自嘲気味に笑った。

この会話は、すでに...

ログインして続きを読む